Tanaka Ohzeki Research Group

情報数物研究会

2017年度 情報数物研究会

日程・場所 2017年11月15日水曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 藤本晃司氏(京都大学大学院医学研究科附属 脳機能総合研究センター)
講演タイトル 圧縮センシングを用いた腹部造影ダイナミックMRI
アブストラクト MRIは非侵襲的に人体内部の病変を可視化出来るという点で, 現代の医療に欠かせない. MRIの大きな課題のひとつに撮像時間の短縮化が挙げられるが, 近年圧縮センシングの方法論を画像再構成に組み込むことで従来よりも少ないデータから同等の画像が得られることがわかってきた. 本講演では, ラジアルスキャンを用いた撮像データから腹部造影ダイナミックMRI画像を再構成する手法について紹介し, 再構成手法を改良することで同一の観測データから呼吸による動きの情報を組み込んだ再構成が可能となることを示す. また, MRIではアレイコイル(複数の信号受信センサー)によって得られたデータの冗長性をこれまでどのように用いてきたか, 圧縮センシングの登場によりそれがどう変わってきたかについても言及したい.
日程・場所 2017年10月25日水曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 世永 公輝氏(産総研・東北大 MathAM-OIL)
講演タイトル 物性物理における密度行列繰り込み群の応用
アブストラクト 我々の身の回りに存在する物質は膨大な数の電子から構成されており,その物性を正し く理解するためには数値解析が必要不可欠とされている. 密度行列繰り込み群(DMRG)は強力な数値計算手法の一つであり,物性物理において長ら く用いられてきた. また、近年では ”エンタングルメント”という新しい概念との関連性も議論されてお り,DMRGの応用範囲は大きな広がりを見せている. 本講演ではDMRGの有用性と問題点をエンタングルメントの観点から議論し,我々が取り 組んでいる新たな手法について紹介する.
日程・場所 2017年10月19日木曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 高橋惇氏(東京大学大学院総合文化研究科)
講演タイトル 量子モンテカルロを用いたStoquasticな量子アニーリングのシミュレーション可能性
アブストラクト 現在量子アニーリングマシンは, 現状で実用化されている唯一の「量子コンピュータ」であり, 盛んに研究が行われている. しかし, 量子アニーリングにおけるハミルトニアンは Stoquastic と呼ばれる, 量子モンテカルロ法によるシミュレーションの際に負符号問題を生じない性質を持っているため, 万能量子計算の能力を持ち得ないという批判も多い. 一方で, Stoquasticな量子アニーリングが古典計算と多項式的に等価なのか, 古典計算よりも真に強力であるかに関しては未解決問題である. 本研究ではStoquastic であるにも関わらず, 古典アルゴリズムが多項式シミュレートできない可能性のある具体例について交換モンテカルロ法の有効性を数値的に検証する.
日程・場所 2017年7月24日月曜日16:20-17:50
電子情報システム応物系3号館2階大セミナー室(206号室)
講演者 宮崎 涼二氏(東北大学大学院情報科学研究科)
講演タイトル コヒーレントイジングマシンとその応用
アブストラクト 近年,組み合わせ最適化問題を素早く正確に解くことのできる新しいタイプの計算機の開発に注目が集まっている.その一つとして期待されているのがコヒーレントイジングマシンである.コヒーレントイジングマシンは光の性質を利用してイジング変数を作り,それらが自発的にイジング型のハミルトニアンの基底状態を実現することで最適化問題を解く.本講演では,コヒーレントイジングマシンの仕組みを説明し,その応用例として圧縮センシングへの適用について紹介する.
日程・場所 2017年5月10日水曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 徳田 悟氏(産総研・東北大 MathAM-OIL)
講演タイトル 分光測定へのベイズ的アプローチ:データ解析から実験計画まで
アブストラクト エネルギー準位は対象の物性を司る情報であり, 我々は種々の分光測定によってそれを知ることができる. 測定スペクトルからエネルギー準位を目視で識別することはしばしば難しい問題である. 準位数を仮定し, ピークフィッティングを行うことでそれを識別することが常である. しかし, 実際は準位数自体が未知であり, それが知りたいという状況に度々遭遇する. 本講演では測定スペクトルから準位数自体をも推定した上でエネルギー準位を求める逆問題をベイズ推定に基づき定式化し, それを解く枠組み(ベイズ的スペクトル分解)を紹介する. また, 統計力学とベイズ推定の数理的な対応に基づき, この枠組みを数値的に解析することで, 測定ノイズがある大きさを超えると推定される準位数が誤った解になる現象(ベイズ推定の相転移)を説明する. さらに, 分散型分光法の物理モデルを考慮することで, 正しい準位数を導くために必要な測定時間(測定限界)を評価し, 実験計画に生かす可能性について述べる.