情報数物研究会
2010年度 情報数物研究会
日程・場所 | 2011年2月25日金曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | Chiu-Ting Candy Hsu 氏 (Department of Computer Science, National Tsing Hua University, Hsinchu, Taiwan) |
講演タイトル | Age estimation using nonnegative facial feature projection |
アブストラクト | Nonnegative matrix factorization (NMF) tends to characterize local feature variation and has been shown to be better interpretable on facial images. In our recent work on solving the facial age estimation problem, we propose to extract age-related features by using a supervised NMF. In addition, since different people usually have very different aging tendency, it is by no means an easy task to find a set of good age-related features feasible for all individuals. To overcome this difficulty, we further include a person-independent constraint and propose a new approach called person-independent supervised NMF (PI-SNMF) to characterize the aging properties. This talk will present that our proposed PI-SNMF successfully extracts the aging-related features. Our experiments also show that the derived facial bases indeed characterize age-related local variations and the estimation accuracy outperforms most existing methods. |
日程・場所 | 2011年2月18日金曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 松田佳希氏 (東京工業大学大学院理工学研究科) |
講演タイトル | ランダムグラフ上の+/-J模型におけるスピングラス相境界 |
アブストラクト | 疎結合グラフ上のランダムネスを伴う問題は,情報科学における最適化問題の一 例として知られているが,同時に統計力学におけるスピングラス模型でもある. これまでの研究により,疎結合グラフ上のスピングラス模型では,低温において スピングラス相と呼ばれるランダムに凍結した秩序相が存在する事が知られている. このスピングラス相の存在と,最適化問題を解く上でのシミュレーテッドアニー リングに代表されるメタヒューリスティックアルゴリズムにおける困難性との関 連が指摘されており,スピングラス模型の相構造を解明することは最適化問題か らも重要な意味を持つ. 疎結合グラフにおいては,Cavity法として知られる強力な手段を用いることで, スピングラス模型を近似的・もしくは厳密に解くことができる. 本講演では,疎結合グラフ上のスピングラス模型について解説した後,Cavity法 を用いた数値計算について報告する. 結果として,スピングラス相境界が相互作用のランダムさに依存しない相図が一 般に得られたが,この結果の背景や物理的な意味についても議論したい. |
日程・場所 | 2010年11月26日金曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 河原吉伸氏(大阪大学 産業科学研究所 知能推論研究分野) |
講演タイトル | 劣モジュラ性を用いた大域的探索法とその応用 |
アブストラクト | 情報工学における重要な問題の中には,本質的には,集合関数の最適化を目的と するものが数多く存在する。特徴選択やグラフ構造学習,能動学習,クラスタリ ングなどである。例えば特徴選択においては,有限の特徴の集合から,何らかの 基準を最適にする部分集合(一部の特徴)を取り出す事を目的とする。一般に機 械学習などの分野においては,これらの問題を連続領域へ緩和した定式化を行 い,効率的な計算を行うための方法について議論される事が多い。これは「予 測」を目的とした汎化誤差最小化という観点からは妥当なアプローチである一 方,応用によっては,このようなアプローチにより得られる局所解ではなく,厳 密解(大域的に最適な解)を計算する事が本質的に重要となる場合も多い。しか し一般に,所謂組合せ爆発の発生のために,多くの場合,規模の増加と共に現実 的時間内での計算は極めて困難になる。 本発表では,劣モジュラ性と呼ばれる集合関数の離散構造を利用する事により, 上記のような問題において厳密解を計算するための効率的な大域的探索法につい て議論する。特に,近年提案された劣モジュラカット法を中心に,劣モジュラ性 が,大域的な探索法の構築において極めて有用である事について述べる。発表で は,厳密解が重要となるいくつかの具体的な問題を取り上げ,実際の計算例につ いても示す。 |
日程・場所 | 2010年11月12日金曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 岡田真人氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科) |
講演タイトル | マルコフランダムフィールド(MRF)モデルの広がり ---MRFの脳科学と地球科学への適用--- |
アブストラクト | 確率的情報処理の分野で最も使われているモデルの一つであるマルコフランダム フィールドモデル(MRF)は画像処理を中心に応用されてきた.MRFは二次元スピン 系との数理的対応もあり,日本が先導的立場で発展させた, 磁性体の平均場近 似が世界的にも注目を浴びている. MRFは脳の視覚情報機構のモデルとしても重要であるが,それだけでなく近年, 脳の神経スパイクの変動発火率推定やEEG(脳波)の解析に応用され始めている. さらに最近,我々は画像修復と同様の数理構造を持つ地球科学の地質媒体評価へ MRFを適用している.本セミナーでは,MRFによる画像修復の平易な解説をもとに, MRFの脳科学と地球 科学への応用を俯瞰的に解説する予定である. |
日程・場所 | 2010年10月29日金曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 津田宏治氏 (産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター) |
講演タイトル | 複合ソート法による高速な全ペア類似度検索 |
アブストラクト | 近年,画像や信号などを,数十ビット程度のスケッチとよばれるビット列で表す 手法が,多く提案されている. ここから,半教師つき学習などに必要な類似度ネットワークを作成するには,ハ ミング距離の意味で近いペアを網羅的に発見する必要がある. しかし,全てのペアに関して距離を計算する方法は遅すぎ,三角不等式を用いて 枝刈りをする方法を用いても十分な速度が得られない. 本発表では,アイテムセットマイニングに用いられるPattern Growth法と,基数 ソートを組合わせた複合ソート法という手法を紹介し,160万サンプルの画像 データに適用して,cover tree, Lanczos bisectionなどの他手法よりも,大幅 に高速であることを示す. 特に,Locality sensitive hashingを用いてスケッチを作成した際の平均的な偽 陰性確率(見逃しの確率)や,重複した発見を避けるための工夫についても述べる. |
日程・場所 | 2010年7月30日金曜日 16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 鬼沢直哉氏 (東北大学電気通信研究所) |
講演タイトル | Low-Density Parity-Check(LDPC)復号ハードウェア設計手法 |
アブストラクト | 近年のモバイル機器の通信容量増大に伴い,高品質なデータ通信を実現する誤り 訂正符号(Error correcting codes:ECC)が必須の技術となっている.Low- Density Parity-Check(LDPC)符号はECCの一種でシャノン限界に迫る高い誤り訂 正能力を持つことから,mobile WiMAX, WiFi(IEEE 802.11n),10GBase-T等へ採用 されている. そのLDPC符号は,符号長が大きくなるに従い誤り訂正能力が高くなる一方で,そ の復号ハードウェアが複雑になるため,要求されているbit error rate(BER)や スループットに応じて, そのハードウェアを構成する必要がある. 本講演では,上記の要件を考慮したLDPC復号器のハードウェア実装方法について 述べる. |
日程・場所 | 2010年7月14日水曜日 16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 井上純一氏 (北海道大学大学院情報科学研究科) |
講演タイトル | 量子モンテカルロ法の確率過程に従うスピン系のマクロ変数の発展方程式 |
アブストラクト |
無限レンジ相互作用を有する平均場模型の平衡状態は有限個のマクロ変数で系の性質が記述される.
系が平衡状態から離れている場合でさえも, 系をミクロに記述するマスター方程式を熱力学的極限で粗視化し, 有限個のマクロ変数へと情報を縮約することで,系の時間発展をそれらマクロ変数の発展を介して調べることができる.
実際, Coolen と Ruijgrok [1] は結合強度が非対称なホップフィールド模型に有限個のパターンを埋め込んだシステムの系列想起過程をこの方法によって解析し,その後, この手続きはCoolen, Laughtpn and Sherrington によってスピングラス系へと拡張され [2], 「動的レプリカ理論」として発展を遂げている.
一方, 量子系の時間発展は本来シュレーディンガー方程式に従うが, 量子アニーリングなどの量子揺らぎを用いた情報処理を大規模問題に対して適用する場合には量子モンテカルロ法によって量子系を計算機上に「シミュレート」することになる.
このシミュレートされる古典系の「マスター方程式」を考えることで,その量子系のマクロ変数の発展式が導出できないか, また, それを量子情報処理過程の性能評価に使えないかを検討することが, 本研究の目的である.
我々の得た結果[3]から, 実際, それは可能であり, 「静的近似」が成り立つ条件下ではマクロ変数の発展式を解析的に導出することができる.
本講演ではその定式化と導出過程を詳しくみた後, 静的近似の妥当性を議論し,時間が許せば確率的情報処理への応用にも触れたい [4,5]. [1] A.C.C. Coolen and Th W. Ruijgrok, PRA, Vol. 38, 4253 (1988) [2] A.C.C. Coolen, S.N.Laughton and D. Sherrington, PRB, Vol. 53 8184 (1996) [3] J. Inoue, JPCS, in press (2010) (arXiv:1004.2943) [4] J. Inoue, PRE, Vol. 63, 046114 (2001) [5] J. Inoue and K. Tanaka, PRE, Vol. 65, 016125 (2002) |
日程・場所 | 2010年6月29日火曜日16:30-18:00
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 中山英久氏(東北工業大学工学部) |
講演タイトル | 情報ネットワークの定量化に基づく状態定義の技術 |
アブストラクト | 情報ネットワークの弾力的な利活用のためには,ネットワークのトラヒック観測を通じて得たパケット・データを分析することが肝要である.ゆえに,パケット・データに基づいた数理モデルを構成して分析することが常套だと考えられる.しかしながら,情報ネットワークに接続されるコンピュータ端末は各々任意なノードとして存在しており,ノード間の相互関係をクリアに定義することは困難である.そのため,トラヒック観測点でのパケット・データから得られる知見に基いた,ある種のヒューリスティックなモデルを適用した応用研究は少なくない.本講演では,ストリーミングによるコンテンツ配信のトレータトレーシングを行う技術,および,アドホックネットワークにおける動的な異常検知技術について紹介する.暗号化などにより直接にパケット・データを観測できないが,パケットのデータ量のみ観測が可能なネットワーク環境では,ストリーミングの波形を検出して状態が定義できる.また,端末のみで構成が許されるアドホックネットワークは,インターネットに代表される通常のネットワークよりもトポロジの動的な変化が大きく,ネットワーク層の挙動が時々刻々と変化するため,観測結果の定量化が困難であったが,履歴に対する重みをつけた主成分分析の導入により,通常状態と異常状態を動的に定義可能である.実際のパケット・データを観測した結果に基づくモデル化や,情報ネットワークの定量化に関する今後の展開について議論したい. |
日程・場所 | 2010年6月4日金曜日16:30-18:00
情報科学研究科棟2階中講義室 |
講演者 | 内澤啓氏(東北大学大学院情報科学研究科) |
講演タイトル | 生体情報処理の視点に基づいたエネルギー効率の高いしきい値回路の設計 |
アブストラクト | 神経回路網で実現される情報処理において,神経細胞間の情報伝達には電気信号 (パルス)が用いられている. 近年の研究により,このパルスの発生は脳にとって非常にエネルギーコストが高 く,結果として神経回路網で実現される情報処理は,パルスの発生量を少なく抑 えて実現されている,という事実が明らかになった. 「しきい値回路」(あるいは,McCulloch-Pitts モデルによる回路)は脳の神経 回路網の理論モデルのひとつである. 本講演では,計算過程で生じるパルスの発生量の少ないしきい値回路がどのよう な性質を持つのかについて,これまで分かっている理論的な結果を紹介する. また,特定の情報処理を行うパルス発生量の少ないしきい値回路の回路構造につ いても述べる. |