Tanaka Ohzeki Research Group

情報数物研究会

2020年度 情報数物研究会

日程・場所 2020年10月23日金曜日17:00-18:30
オンライン
講演者 工藤和恵氏(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻 / お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系)
講演タイトル 制約量子アニーリングにおける局在現象
アブストラクト

量子アニーリングの過程では、量子ゆらぎが小さくなるにつれて、アンダーソン局在に類似した現象が起こる場合がある。制約量子アニーリングでは、解きたい問題に課される制約条件が自然に満たされるように、量子ゆらぎの項を設定する。これをグラフ彩色問題に適用すると、モデルは実効的な局所磁場下の1次元アンダーソン模型とみなせる。この視点からみると、量子アニーリングの過程で一般的に起こりうる局在現象とは異なる捉え方ができる。
ここでは、小規模な系の基底状態を数値的に求めることで、局在現象の捉え方を議論する。局在現象を捉える指標としてconcurrenceを用い、その実効磁場のゆらぎへの依存性を示す[1]。通常の1次元アンダーソン模型における局在現象との比較も行い、性質の違いを示す。

[1] Kazue Kudo, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 064001 (2020).

日程・場所 2021年1月21日木曜日15:00-16:30
オンライン
講演者 奥川亮氏(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻)
講演タイトル 対称性に保護された非エルミート系のトポロジカル物性
アブストラクト 近年非エルミート系の物性現象に関して、トポロジカルな側面から研究が精力的に行われている。特に、例外点や表皮効果はその例である。例外点とは、非エルミートハミルトニアン特有の固有値縮退であり、そのパラメータでは対角化不可能となる。非エルミート系のバンド構造を考えると、例外点は2次元波数空間では点状、3次元では線状になることが知られる。さらに、非エルミート系ではハミルトニアンのスペクトルが強く境界条件に依存する。この現象は非エルミート表皮効果と呼ばれ、1次元系では開放境界条件下でバルクの状態が端に局在する。これらの現象はトポロジカル不変量によって特徴づけられる。
本セミナーでは、対称性によって出現する新しい非エルミート物性を説明する。まず、面状の例外点が、空間反転対称性と時間反転対称性が組み合わさることによって3次元系で実現可能なことを示す。さらに、空間反転対称性を用いた特徴づけによって、2次元系ではコーナーに局在する表皮効果が現れることを議論する。

[1] R. Okugawa and T. Yokoyama, Phys. Rev. B 99, 041202(R) (2019)
[2] R. Okugawa, R. Takahashi, and K. Yokomizo, Phys. Rev. B 102, 241202(R) (2020)
日程・場所 2021年2月5日金曜日15:30-17:00
オンライン
講演者 押山広樹氏(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻)
講演タイトル 量子多体系の数値シミュレーションにおける行列積状態の方法
アブストラクト 多数の電子や量子ビットからなる量子多体系を数値的にシミュレーションしその性質を理解することは物性物理や量子計算機の研究において重要である。テンソルネットワーク形式を用いた解析手法は、量子モンテカルロ法が負符号問題により適用不可能なフラストレーションのある系や実時間ダイナミクスの問題に対しても有力であるため、盛んに研究が行われている。
本セミナーでは、テンソルネットワーク形式の中でも最も基本的な行列積状態を用いたアルゴリズムを紹介する。応用例として、量子アニーリングの実機をシミュレーションする手法についても紹介したい。
日程・場所 2021年2月18日木曜日15:00-16:30
オンライン
講演者 樺島祥介氏(東京大学大学院理学系研究科)
講演タイトル 線形回帰にもとづくネットワーク推定
アブストラクト イジングモデルから生成される複数のスナップショットデータにもとづいて,スピン間相互作用を求める問題はボルツマンマシン学習あるいはイジング逆問題と呼ばれる.最尤推定にしたがう限りこの問題は計算量的に困難であり,長らく実用的なデータ解析法とはみなされてこなかった.しかしながら,近年,相互作用の対称性を無視し,相互作用係数の推定を回帰問題に帰着させる偽尤度法(pseudo-likelihood法)が導入されたことにより, タンパク質相互作用や遺伝子発現などかなり大規模な問題にまで利用されるようになってきた.
本講演では,偽尤度法により素に結合したイジングモデルのネットワーク形状が推定できるか,という問題を考察する.イジングモデルへの素朴な偽尤度法の適用はロジスティック回帰に帰着する[1].ただし,計算量的な効率性を優先し推定に線形回帰をもちいることもしばしばである.そこで,こうしたミスマッチモデルをもちいた場合の推定の妥当性を問う[2, 3].スパースなランダムネットワークに対して統計力学的な解析を行った結果,ネットワークの形状については正しいモデルで推定した場合と遜色ない性能が得られることがわかった. その結果について報告する.

[1] A. Abbara, Y. Kabashima, T. Obuchi and Y. Xu, JSTAT (2020), 073402
[2] X. Meng, T. Obuchi and Y. Kabashima, arXiv:2008.08342
[3] X. Meng, T. Obuchi and Y. Kabashima, in preparation