Tanaka Ohzeki Research Group

情報数物研究会

2019年度 情報数物研究会

日程・場所 2019年11月6日水曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 小渕智之氏(東京工業大学情報理工学院)
講演タイトル ボルツマンマシンによる神経細胞集団の有効な非対称結合推定
アブストラクト 複数の素子からなるネットワークを成していると見なすことの出来る系は、科学・工学の世界にありふれている。素子の動作がある種のイベントの生起(例:神経細胞の発火/非発火、株価の上下、地震の発生など)と対応する場合、ボルツマンマシン(or ロジスティック回帰)によって、比較的自然にモデル化することができる。
本講演では、実際の時系列データをボルツマンマシンでモデル化する際に普遍的に現れるいくつかの技術的問題に焦点をあて、それを情報理論・計算統計の考え方に従って、系統的・効率的に解決したお話をする。
開発した方法論を神経細胞集団の発火データ(人工・実データの双方)に適用したところ、実際に存在する物理/生物学的結合を極めて良い精度で復元することが示された。これは、ボルツマンマシンという統計モデルとニューロンが従うダイナミカルモデルが乖離していることを考えると驚くべき結果であり、神経細胞集団をボルツマンマシンで扱うことを強く支持してくれる結果である。
講演では、以上の内容を初等的なところから解説する予定である。
日程・場所 2019年7月3日水曜日16:20-17:50
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 越川亜美氏(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻)
講演タイトル イジングマシンを用いた組合せブラックボックス最適化
アブストラクト ブラックボックス最適化とは、関数形が不明で、出力を得るまでにコストがかかる関数の最小化を図ることである。ブラックボックス最適化の主な手法にベイズ的最適化が挙げられる。この手法は機械学習のハイパーパラメータ探索に用いられている。
このベイズ的最適化に関して、組合せ問題に対する手法が近年提案された [Baptista 2018]。本研究ではこのアルゴリズムの一部をイジングマシンで実装し、スピングラス模型に適用しベンチマークテストを実施した。本セミナーではベイズ的最適化の概要および研究結果について紹介する。
日程・場所 2019年5月15日水曜日16:30-18:00
情報科学研究科棟2階中講義室
講演者 奥山真佳氏(東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻)
講演タイトル 最適制御理論が平均場量子スピン系を厳密に解く
アブストラクト

分配関数を厳密に求めるのは一般に非常に難しく、厳密解が得られる模型は限られている。Currie-Weiss模型に代表される平均場古典スピン系では、鞍点法を用いることにより、熱力学極限での自由エネルギーを厳密に求めることが容易に可能である。平均場量子スピン系に対しても鈴木・トロッター変換によって分配関数を古典系の分配関数にマッピングすることにより、同様の解析を実行することは可能である。しかしながら、このとき分配関数には虚時間方向の依存性が生じるため厳密な解析を行うことは困難であり、これまでの先行研究では虚時間方向の依存性を無視する静的近似が広く用いられてきた。
静的近似は必ずしも良い近似解を与えるわけではなく、ランダムな相互作用を持つ横磁場SK模型では静的近似が破綻することが知られている[1]。一方で、相互作用が一様な平均場模型では数値計算の結果などから静的近似が厳密であると信じられている[2]が、その証明は非常に特殊な場合に限られていた。
我々は有限パターンのHopfield模型を一般化したクラスの平均場量子スピン系に対して、分配関数の虚時間方向の寄与を評価する問題を虚時間シュレディンガー方程式における最適制御問題と見なすことにより、静的近似を用いずに分配関数を厳密に求めた[3]。結果として、このクラスの平均場量子スピン系では静的近似が常に厳密であることが明らかになった。
さらに、我々の結果は非一様横磁場や非擬似古典ハミルトニアンを用いた量子アニーリングによる計算時間の指数加速が報告された先行研究[4,5]を含んでおり、先行研究の解析が厳密であることを意味する。

[1] T. Obuchi, H. Nishimori, and D. Sherrington, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 054002 (2007).
[2] T. Jorg, F. Krzakala, J. Kurchan, A. C. Maggs, and J. Pujos, Europhys. Lett. 89, 40004 (2010).
[3] M. Okuyama and M. Ohzeki, arXiv:1808.09707.
[4] Y. Seki and H. Nishimori, Phys. Rev. E 85, 051112 (2012)
[5] Y. Susa, Y. Yamashiro, M. Yamamoto, and H. Nishimori, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 023002 (2018).